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無線というものは有限容量だというお話

  • 2023年4月28日

加藤です。

ITmediaより

なぜドコモで「つながりにくい」問題が起きているのか 明かされた根本的な要因

https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/2304/27/news103.html

ITmediaより引用

 無線の話になると若干毒が混じりますことを先にお詫びしておきます。さて、今回のお話ですが記事の内容がドコモの現状を説明されていますので、この件は記事に任せるとしてそもそもですがなぜ無線帯域はしばしば不足するのか?という根本的なお話のほうを少々。

 モバイルネットワークはもちろん有線ではなく無線です。無線は電波を使用して端末と基地局を繋いで通信を行っているのはいうまでもないですが、その基地局からさらに昔でいう交換機へ繋がりそこで通信をさばいているという形です。(注:この交換機に当たる部分は音声とデータ通信で別になっていますが、あえて詳細は省きます)よく「繋がりづらい」と言われる場合には2パターンあることがここからもわかりまして、まず端末と基地局が繋がりづらいというもの、もう一つは交換機が混雑して通信が処理できないというパターンが考えられるわけです。数年前にドコモで通信しづらいと言われたの後者であり、今回の問題は前者であるため状況が異なるということは理解しておくと精神衛生上(!?)よいかもしれません。

 さて、ではなぜ端末と基地局の通信が成立しづらい状況が発生するのか?についてをお話すると、無線というのは名前から想像するように無限に容量があるわけではなく、各基地局で繋ぐことのできる端末の数というがまず限られています。次に電波には周波数という道路の種類のような概念があり、低い周波数ですと車線は少ないが遠くまでいける、高い周波数だと車線も多く早く走れるが近くまでしかいけないというような特性があり、さらに道路で考えればわかりますが道路を同時に走れる車の台数が無限ではなく車線の数やその先の道路の状況によって変わってきます。つまり、無線は同時に通信ができる端末台数には制限があり、それを超えると基地局と繋がることもできないという状況が生まれるわけです。

 なお、この状況を生んでいるもう一つの要因が通信の高速化です。昨今の通信高速化の手法として「1台の端末で何車線も使用する」ことを前提としており、これが無線の帯域圧迫を助長している要因でもあります。皆が4車線を求めて基地局に殺到してきても、基地局への道は8車線しかない場合、人数で車線を割るしかないとなり、当然速度が落ちることになります。このような状況を解消するために新しい道路(周波数帯)を採用してそれに対応し端末では積極的にそちらを使用させることで渋滞をコントロールするということをしてきましたが、端末の買い替えが長引く中これもうまく作用しなくなっています。 では、既存の道路拡張しては?と考える方もいるでしょうが、そも無理なのです。なぜから他社が隣に自社用の道路を作ってしまっているからです。もう無線用の空き地はほぼないに等しいのです。そんな中「その用地タダで整備して明け渡せ」なんていうトンチンカンな事業者にはウンザリする私です。

 そうなると新しい土地をできるだけ探してなんとか使えるようにするか、既存の効率化をするしかないのですが、5Gと言っているプロモーションジェネレーションでは通信そのものの効率化は実現せず、基本的な通信方法は4Gとなにも変わりません。せいぜい新しい周波数が使用できる、一人でもっと多いくの道を使う方法を盛り込んだ程度のものです。(注:5Gと言われるものももちろん新しい周波数や細かな手法で容量に対する改善はされていますが、世代交代とは言えない程度なのでこのように書いています。)

 ここまでお話したように、無線通信は通信できる人数も容量も有限であり、利用者が増えるなら利用できる無線の場所(周波数)や車線の広さ(帯域)を広げるか、空いてる道に渋滞を迂回させるか地道な対応を積み重ねるしかないというのが現実なのです。そういう意味で自宅では有線通信環境を使ったり自身でwifiを用意するなどしてモバイルネットワークへの負荷を下げるいうことも大きな意味で通信環境を健全に保つ一つの活動であったりするのです。

 本日は少々長文となりましたが、無線通信についてお話をしてまいりました。通信技術というのは見た目の数字をあげることは比較的容易なのですが、実は根本的な部分は昔から変わっておらず、対応は地道に行うしかない、いきなり改善はしないということを一人でも多くの方に知っていただけたらという想いでつづってまいりました。何かのお役に立てば幸いです。